微分積分学を学びます。微分積分学は数学の根っこであり、古代ギリシアの求積法から続く歴史を持っています。積分はリーマン式で行います。初学者は、多変数の微積まで、まず計算法を習得する、という手もあると思います。連続性などは実は「位相空間論」で学んだ方がすっきりわかるかもしれないので、適宜織り交ぜながら講義を行います。教科書の都合上、多変数の解析、ベクトル解析まで含み、常微分方程式論は入れないことにします。(以下に挙げる本の中で、常微分方程式論が書かれているのは溝畑茂本だけです。常微分方程式論をやらないと、微分積分はマスターできないと思います。)
「名著が多い。下に並べたものはそれぞれに個性的で本格的である。」
(古くからある教科書。用語が古いのと議論が雑な箇所があるが、一つの思想に貫かれていて、多くの内容がコンパクトにまとめられている。複素関数論、ルベーグ積分の初歩も述べられている。
別名「解析門前払い」。分厚いが、順番に読めばわかる。実数の定義が公理として与えられ(次の小平本は有理数の切断による構成が書かれている。)、議論はすっきりしている。例が多くて難しいものもあり、上級者には面白いが初心者は適宜飛ばすとよい。
別名「解析卒業」。東大のO教授がそう言っていたと友人のW君が言っていた。あらゆる意味で杉浦本と好対照。一見ソフトに見えるが、行間をちゃんと埋めて読むのはとても難しいし、力がつく。
上記はすべて解析学者の本ではない。そのことは短所でも長所でもあるが。溝畑氏はアンドレ・ヴェイユも激賞した世界的な解析学者であり、この本も解析的でとても良い。
逆に解析的でなく、とてもモダンでその意味でとても面白い。積分はルベーグ式である。入手は困難だが面白い人には面白いと思うので、図書館で手に取ってみることを勧める。)
この本もモダン。いわゆる多変数解析、ベクトル解析の教科書。肝心な証明が一か所間違っているので、そこを修正した私のノートをもとに講義します。
線形代数(昔は「線型代数」という漢字なのが普通だった。)、つまり体上の加群の理論を学ぶ。少し上のレベルの数学を学ぶと、線形代数は簡単すぎて、いろんなことがうまくいきすぎていて、「空気のような科目」だと思う。初学者にとってみれば、わかるまでが難しい科目のように思う。線形代数は、わかるか、わからないか、なのだ。中途半端なわかり方では何もわかってないことになってしまう。(代数系の授業はすべてそう言える。)線形代数は代数の基礎であるのみならず、各専門にも必須のものである。幾何学専攻者は、曲面、多様体の概念を把握するのに線形代数は必須である。解析学専攻者は、考えたいクラスの関数全体からなる空間が線形空間であり、「無限次元線形代数」つまり「関数解析」という科目が一年次の線形代数に続く科目であり必須である。教科書の都合でジョルダン標準形とテンソル積(東京大学理学部数学科2年次「代数と幾何」)まで含む。
「上の2冊は古くからある名著であり、下の2冊は「2年生向けの教科書」としていい本と思います。」
本格的な多様体論を学ぶ前に、初等的な曲線曲面論を学んでおくといいと思います。
「次の本が有名です。この本のレベルをマスターすることを目標にします。」
常微分方程式論を学ぶことによって、微分積分学は完結します。微分がある以上、微分方程式があります。変数が一個の場合をordinary differential equationつまり常微分方程式といいます。(いい訳語ではないと思いますが。)常微分方程式は、変数が2個以上である「偏微分方程式論」の準備であるだけでなく、それ自身も、(起源が古いにもかかわらず)現代でも活発に研究されている面白い分野です。東大では、代数幾何や数論がかっこいいことになっていて?あまり微分方程式を学ばない学生が多い気がします。そういう方は次の久賀本、西岡本を手に取ってみてください。微分方程式がいかに「かっこいい数学」と関わっているかが分かると思います。
「名著がたくさんあります。」
東大の意欲ある1年生向けの講義録。様々なことが微分方程式に絡まることが分かる。
この分厚い教科書の素晴らしいこと!興味のある所から勉強してみてください。
吉田耕作は世界的な数学者。英語の教科書「functional analysis」は古典的な教科書。この本では基礎から小平展開定理まで学べる。
学部セミナーで白石潤一さんと読んだ本。岡本多項式に誤植があります、岡本和夫さんに質問に行ったのもいい思い出。予備知識はほぼ不要。線形代数の威力を知ります。
複素変数の方程式について詳しい。
ここで紹介するには勇気がいりますが、超越数論の基本です。代数の基本があれば読めるようになっています。
私の微分積分の講義のネタ本。様々な関数を微分方程式の解として導入します。